研究テーマ

現在の研究テーマ

現在の研究テーマ

(2023年度までの研究テーマ)

2023年度までの研究テーマ

CO2地中貯留技術事例集を公開しました。

研究テーマ

1. 国内外サイトにおける大規模CO2圧入・貯留に係る安全管理技術の実用化検討

  • 光ファイバーを利用したマルチセンサーモニタリング技術の開発

    当組合が開発した、光ファイバーを用いた分布式音響計測(DAS)、分布式ひずみ計測(DSS)、分布式温度計測(DTS)のマルチセンサー計測技術をシステム化し、商用規模のCO2地中貯留が実施されている米国ノースダコタサイトにおいて実証試験を行っています。特にDAS計測においては、常時発振源であるSurface Orbital Vibrator (SOV)を用い、貯留層内のCO2プルームのイメージングを行うとともに、CO2挙動シミュレーション結果とマッチングさせる技術の確立を目指しています。これらの知見および成果は、国内CO2貯留の社会実装に向けた地質評価・モニタリング技術の向上に反映します。

  • 光ファイバー測定に基づく断層の水理的・力学的モデリング、ジオメカニクス解析による断層安定性や健全性のリスク評価

CO2地中貯留におけるリスクとして、サイト周辺に位置する断層への影響と、CO2漏洩が考えられ、特に断層が多い我が国においては、断層安定性監視技術および漏洩監視技術の開発は不可欠です。そこで、光ファイバー計測技術を利用して、断層安定性評価、断層・破砕帯の特性評価、断層を経路とする漏洩監視の技術確立を目的として、日豪共同研究の枠組みの中で、豪州のCO2圧入サイトにおける実証試験を実施しています。

 

2. 国内外プロジェクト事例を活用した大規模貯留層の有効圧入・利用技術の実用化検討や事業コスト評価

  • 複数坑井間の水理特性評価および坑井の最適配置

    我が国のように地質構造が複雑で、かつ薄い砂岩層が存在する地層を地中貯留サイトでは、複数の圧入井が必要となる場合があります。そこで、複数井の最適な配置を評価するために、広域地下水流動に伴う地層ひずみ測定実施と広域地質モデルの統合化技術の開発に取り組んでいます。また海外大規模貯留プロジェクト事例をもとに、事業規模を拡大する際の坑井の掘削位置に関し、その決定方法について検討しています。

  • 大規模貯留層特性に適したCO2圧入および貯留の最適化、多様化

    我が国では水溶性ガス田が多く、その地層を地中貯留に利用することにより、CO2貯留層の多様化、貯留量の拡大を図ることが可能となります。そこで、我が国の水溶性ガス田の特性を調査した上で、CO2圧入方法を開発し、実際のサイトでの圧入試験を行い、当該技術の確立を目指します。

  • 大規模なCCS事業を想定した事業モデル策定、コスト評価方法の確立とCCS事業化のためのインセンティブ検討

    国内の大規模なCCSの検討が進んでいますが、その構成は多様です。当組合がこれまで開発してきたCCSビジネスモデルやコスト分析の手法などを適用し、活用マニュアルを整備しています。一方、CCSが事業として成立するには、経済的なインセンティブが不可欠であることから、我が国の法制度を踏まえ、CCS事業の発展が期待され、民間の創意工夫を引き出すことが可能なインセンティブ制度のありかたについても検討しています。

    また、国内CO2貯留サイトでの地質評価やモニタリングにおけるコスト評価・削減の可能性について検討しています。特に、我が国では沿岸域での地中貯留が想定されることから、海域での弾性波探査において、従来のエアガン(圧縮空気放出装置)の代わりに、小型で浅い水深でも利用可能なマリンバイブレータの適用検討・実証試験を行い、モニタリングのコスト低減効果を評価していきます。

    2. CCS技術の社会実装に向けての普及条件の整備

    • CCSに対する地元住民の理解促進

      CCSの社会実装のためには、CCS実施による経済的メリットを明らかにし、また、地元住民のCCSに対する懸念を払拭して、CCSに対する地元住民の理解を得る必要があります。このため、産業連関表を用いた地元経済メリット分析手法、科学的根拠に基づくリスクコミュニケーション手法を提案し、将来のCCS事業者が国内において利用可能な活用マニュアルとしてとりまとめていきます。

    • CCSに対する国民の理解促進、CCS技術事例集の更新

      CCSの普及促進には、日本国民の理解向上が欠かせないため、テクニカルワークショップ(国内向けの幅広い情報発信)とCCSフォーラム(CCS有識者間や産業界との情報交流)を継続的に実施しています。また、CCSの事業化の促進に向けて、CCS事業の基本計画からサイト閉鎖後管理までを網羅する「CCS技術事例集」を作成しましたが、引き続き、CCSに関する最新の技術情報や事例を取り入れて、「CCS技術事例集」の更新を行っていきます。

     

    • 政府間のCCUS協力に即した海外機関との技術連携、国際標準化との整合や日本独自のCCS技術の海外展開など

      先行する北米や欧州、急速に拡大していく豪州やアジア地域などの海外のCCS関連機関との技術連携を実施し、国際基準にも適用できる日本独自のCCS技術の海外展開や日本企業の海外事業活動との連携を進めています。

     

     

     

    (2023年度までの研究テーマ)

    1. 大規模CO2圧入・貯留の安全管理技術の開発

    • (1) 圧入安全管理システムの開発

      自然地震や圧入に伴う微小地震の観測結果、CO2挙動モニタリング、CO2圧入データを基に、交通信号のようにCO2圧入が安全に施行できる安全管理システム(ATLS)の開発を行う。

    • (2)CO2長期モニタリング技術の開発

      弾性波探査を補完する長期連続モニタリングシステムとして、高精度重力モニタリング技術を開発し、CO2挙動評価技術への適用性を検証する。

    • (3) 大規模貯留層を対象とした地質モデルの確立

      大規模貯留層の貯留可能量評価のため、評価技術の開発及び地質モデル構築手法を確立し、苫小牧実証サイトや適地調査サイトに適用する。

    • (4) 大規模貯留層に適したCO2挙動シミュレーション、長期挙動予測手法の確立

      大規模貯留層内のCO2の長期的な挙動を予測するため、我が国の貯留層の地化学反応特性を考慮したCO2長期挙動予測手法、およびキャップロックの長期的な遮蔽性能評価手法を確立し、苫小牧実証サイトや適地調査サイトに適用する。

    • (5) 光ファイバーを利用した地層安定性や廃坑井の健全性監視システムの開発

      地中埋設型光ファイバーを用いて、CO2圧入による地層の変形を連続的に測定し、貯留層を覆うキャップロック(遮蔽層)の力学的安定性の監視技術や、光ファイバーの測定データに基づいた地層安全性評価のためのジオメカニック・モデリング手法を開発する。また、光ファイバー測定による廃坑井からの地層水やCO2の漏えい検知の有効性を検証する。さらに、光ファイバーを利用したDAS/VSPDistributed Acoustic Sensing – Vertical Seismic Profiling)探査技術の確立を目指す。

    • (6)CO2漏出検出・環境影響評価総合システムの構築

      万一の廃坑井や遮蔽層等から海底へのCO2漏出に対し、有効な漏出検出手法や漏出CO2の海中拡散シミュレーション技術を開発するほか、生物影響データベースの活用によって、環境影響評価を行うための総合システムを開発する。

    • (7)海外機関との協力によるCCUS技術開発の連携

      海外のCCS研究機関との連携を図り、海外のCCSサイトにおいて、断層安定性監視技術を構築するための現場試験などを実施し、技術開発を行う。豪州サイトでは断層安定性評価手法の確立のため、断層安定性・健全性評価試験の実施や、ジオメカニクスモデルによる検討を行う。

    • (8)坑井健全性調査・坑井封鎖実用化試験

      坑井封鎖実用化試験を実施し、長期経過のCCS坑井の健全性評価と坑井封鎖実用化技術を構築するため、現場試験を行う。

    2. 大規模貯留層の有効圧入・利用技術の開発

    • (1)CO2圧入井や圧力緩和井の最適配置技術の確立

      実用化規模(100万t/年程度)の大規模貯留サイトでは、複数の圧入井、あるいは圧力緩和井を利用するケースもあることから、複数坑井の配置や機能を最適化できる手法を、苫小牧や適地サイト等のデータを活用しつつ確立する。

    • (2)マイクロバブルCO2圧入技術の適用による貯留効率の向上

      塩濃度の低い地層水への溶解促進や、貯留層の圧力増加の抑制につながる溶解促進技術を確立するとともに、微細なCO2気泡を貯留層に圧入し、CO2貯留効率向上を図る。室内実験から現場適用手法の検討まで行い、溶解促進技術の適用効果を評価する。

    • (3)貯留性および経済性向上手法の開発(SRM手法の開発)(2021年度新規)

      CO2地中貯留のための深部塩水層を有効利用するため、貯留性および経済性向上手法 (SRM;Storage Resource Management手法)の開発を行う。具体的には、貯留サイトの選定にあたり、CO2排出源との距離などの経済的な要素を考慮するとともに、地質モデル構築に採用する探査や掘削による情報入手方法によって、地下構造・物性の不確実性低減にどの程度寄与するかといった、入手情報の価値や費用対効果に相当する量を評価する手法の検討を行う。
      また、深部塩水層を最大限有効活用するマネジメント手法の開発を進め、我が国の想定大規模貯留サイトに適用し、手法の問題点の抽出や実適用による検証を行う。さらに、貯留サイトと排出源との位置関係や、CO2輸送手段によるコスト評価を加え、CCS全体システムの経済性向上手法も開発する。
      SRM手法の開発

    3. CCSの普及条件の整備、基準の整備

    • (1)CO2貯留安全性管理プロトコルの整備

      CCSの社会的受容性確保にも寄与するIRPの海外サイトの事例を調査し、その機能検討を行った上で日本版IRPを構築する。

    • (2)苫小牧実証試験サイトや海外プロジェクトの成果や情報を用いたCCS技術事例集の作成、国際標準化(ISO TC265)との連携

      国内外の大規模CO2地中貯留プロジェクトの技術事例や知見を集約し、CO2地中貯留事業の基本計画から閉鎖後の管理までをカバーする技術事例集を完成させ、事業者の参照に供する。

    • CO2地中貯留技術事例集を公開しました。
    • (3) CCSの広報活動を通じた社会受容性向上方策の検討

      CO2地中貯留事業の普及に欠かせない社会受容性の向上を図る。また、海外機関との連携により、CCS事業の国際標準化との整合に取り組み、我が国のCCS技術の向上や普及を促進する。

    • (4) 社会合意形成手法の開発(SLO手法の開発) (2021年度新規)

      地元住民や国民全体、投資家、政策担当者等、多様なステークホルダ―を対象とし、CCS社会実装に向けた合意形成を構築する条件を整備するための社会合意形成 (SLO;Social License to Operate)手法を開発する。具体的には、地元住民や国民とのコミュニケーション手法開発、CCS導入メリット分析、インセンティブデザイン支援ならびに法整備支援を行う。